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巡回路
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「すみません」
「何でえ」 「W-ZERO3[es]を新規契約したいのですが」 その男――家電量販店の店員は唇の端を吊り上げた。 「今から買おうってのかい」 時刻は19時を少し回ったところだった。 「ええ」 「わかってるたぁ思うが、こいつは時間がかかる。普通は1時間だが、長ぇ奴になると3日だ。だから今日渡せるという保障は出来ねえ」 そう言って、男は確認書を取り出した。 「ここはウィルコムショップじゃねえから、初期不良といえども対応は出来ねえ」 「はい」 「交換は出来るが、いくらここに在庫があってもウィルコムへ送り返してからの交換だ」 男は覗きこむように余を見た。 男と余の間には鉄のような緊張が満ちていた。 「取り扱いに関する質問にも答えられねえ」 「はい」 「故障、修理についても対応できねえ」 「はい」 「いいねぇ。いいねぇ、おめえさんのそう言う物分りのいいところは嫌いじゃねぇぜ」 男は、ひとつ呼吸をおき、言葉を続けた。 「で、料金プランはどうするね」 「ウィルコム定額とデータ定額で」 「よおく、調べてから来たってえ面だな」 それでも、男はパンフレットを取り出した。 「そうはいっても、説明しなきゃなんねぇ。店員のつれえところさ」 にぃ、と太い笑みが浮かぶ。到底笑顔には見えぬ凶顔は、しかし、確かに笑っていた。 ――1時間後。 ウィルコムの袋をぶら下げて、店を出た。 たまらぬ衝動買いであった。 SPQEにより承認 書記:総統
by soutou_d
| 2006-08-18 17:30
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