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巡回路
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「遅い――」
余の双眸にこわいものが光る。 時刻は既に16時過ぎ。 ヒマを持て余して、戦国BASARA2で1000人斬りを10回は達成した。 たまりかねて、再び故障対応に電話を入れる。 「本日修理に来ていただけるとのことでしたが、まだ連絡が無いようなのですが」 「申し訳ありません。すぐにお調べ致します」 そして、また、待たされた。 折り返し連絡が来た頃には、既に故障対応のリミットである17時を過ぎていた。 「現在、大変込み合っておりまして……」 またか。 既に聞き飽きたフレーズである。 いくら込んでいようと関係ない。 既に、16日の午後、と約束を取り交わした後ではないか。 その為に休みも取っている。 「もしかしたら、本日中の対応については、お断りさせていただくかも……」 余は、歯を噛みながら、受話器を見つめていた。 息をするのさえ、忘れてしまいそうであった。 断るのか。 そう思う。 天下のNTTが、事前の取り決めを無視するのか。 できるのか。 やれるのか。 できるのだと、この担当者は言外に言っている。 同じ会社組織でも、余が仮の仕事で勤める会社などとは、根本的に違う。 研ぎ澄まされた日本刀で、何もかも根こそぎ断ち切るような断り方。 膝が、がくがくと震えていた。 何か、凄まじいものが、背を駆け抜けている。背を駆け登ってゆく。 駆け登って、脳天に突き抜ける。 駆け登っても、駆け登っても、突き抜けても突き抜けても、まだ終わらない。まだ足らない。 自分の背の底に、何か巨大な力の塊が、無尽蔵にあって、それが次から次に背を駆け登ってゆくようだった。 震えるな。 震えるな。 身体の震えを、止めようとしても止めようとしても、止まらない。 「それは困るのです。そうそう何度も会社を休めるものではない。是が非でも本日対応してもらわなければならない」 ようよう、掠れた声で、それだけ搾り出した。 「……わかりました。時刻のお約束は出来ませんが、必ず本日中に修理に向かうように手配致します」 いささかクレーマーじみていたかもしれないが、ともかく既に会社を休んでいる以上、今日でなければ困るのだ。 ともかく本日中であれば、19時だろうと23時だろうと関係ない。 少し気分のよくなった余は、トイレに行き、冷蔵庫から水を出して飲み、戦国BASARA2で11回目の1000人斬りを達成した。 ふと、携帯に着信があったことに気付いた。 音量が絞ってある余の携帯は、ゲーム中は着信に気付かない場合が多い。 auお留守番センターにつないでみる。 「本日中の対応は、やはり難しいようです。後日改めて……」 なんという。 まったく、なんというものを聞いたのか。 なんという対応なのか。 今、耳で聞いたばかりのとてつもない対応。 それは、自分は、本当に聞いたのか。 余は、震える指で、116を押した。 「フレッツADSLを解約したいのですが」 風が甘い芳香を運んできた。 金木犀の花の香りであった。 SPQEにより承認 書記:総統
by soutou_d
| 2006-08-17 12:17
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