|
カテゴリ
最新のコメント
最新のトラックバック
検索
巡回路
以前の記事
おすすめキーワード(PR)
ブログパーツ
ファン
|
食い物の恨みといっても、別に、余が居酒屋で席を立っておる間に、同席した知人どもに熱々カリカリのチーズササミフライ(トンカツソースつき)を全部食われたとか、そんなような具体的かつ、現実的な問題ではない。
余の趣味のうち、赤の他人に聞かせてもさほど問題が生じないもののひとつに読書がある。 余の読書傾向は、一言で言い表せるものではないというか、そもそも、ラブクラフトとスティーブンキングだけならいいとして、他に、隆慶一郎や塩野七生や京極夏彦が入ってくるとなると自分でも統一した傾向を見出すことがまるで不可能であるといえる。 そんなような混沌とした読書傾向の余であるが、脳内においては独自の分類法によって作家を分類しておる。 これはいわゆるレッテル張り以外の何者でもないような気がしてならぬが、まあ、余の脳内でのみ通用するローカルルールであるから特に問題にもならぬであろう。 その中で、食い物作家と呼ばれる区分がある。 食い物作家というのは、一般的な作品のジャンル(ミステリーとかファンタジーとかSFとかであるな)とは全く無関係に、うまそうな食い物を出す作家のことである。 本邦における著名な食い物作家といえば、池波正太郎をおいて他に考えられまい。 鬼平にせよ、剣客商売にせよ、ともかく、事件を解決したいのかうまいものを食いたいのかわからぬくらいに、一話に一回は何か食うシーンがある。 噂によれば、戦時中、軍隊でロクなものを食えなかった池波正太郎の、食い物に対する情念がこのような作風を生んだと言われるが、まあ、そのへんは話半分(確か、GONが出典だ)としてもうまそうな食い物がでてくるのは間違いの無いところである。 さて、意外に思うものもおるかもしれぬが、スティーブン・キングも食い物作家である。 『痩せゆく男』では、いかにも体重の増加を見込めそうな朝食のシーンが印象的であるし、『ドリームキャッチャー』では、アサリのフライをタルタルソースで食うシーンをはじめとして、食い物が要所要所に登場する。そもそも、作中の敵が破滅するのは、食い意地のせいだと言えなくもない。世界を救ったのは、ひょっとしたらベーコンサンドなのである。 そこでようやく、食い物の恨みに戻ってくる。 余は日本人で日本に住んでおる。 ゆえに、池波正太郎が描くうまそうな食い物は、さしたる努力もなく食うことができる。流石に、滋賀で深川丼を出す店は無いかもしれぬが、なんなら、インターネットでレシピを探し、スーパーで材料を買い求めて自炊したってよいのである。 結果、余の好みに合わないことはあるかもしれぬが、その結果、恨みが生じる事はない。食い物の好みは、個人個人異なるものであるから、とやかく言っても仕方がないものである。 ところが、スティーブン・キングはアメリカの作家で、アメリカに住んでおる。 しかも、現代を舞台に話を書くことが多く、ねちこい描写が売りのキングは、具体的な商品名やCMのフレーズまで、作中に登場させる。 これは困ったことだ。 余は、自炊もするから、ハンバーガーだろうが、田舎風ベーコンの目玉焼きだろうが、自作して食うことは可能だ。少しでも、自炊経験のある者なら、キングの登場させる食い物を作れないということはあるまい。アメリカは主婦をキッチンに押し込めるのは害悪だと考えるお国柄であるから、自然と、料理も省力化の方向へ向かっておる。 しかしながら、キングは具体的な商品名を挙げておるので、自炊では不十分だ。 バーガーキングの特大ハンバーガーと書いてあるからには、バーガーキングのハンバーガーを食わねば、作中の人物が感じておるであろう味は味わえぬし、エッゴの冷凍ワッフルと書いてあるからには、エッゴの冷凍ワッフルでないとダメなのである。ついでに言えば、エッゴでレッツゴーとか言われてもそんなCM見たことないのである。 困ったことに、どうやらそれらのメーカーは実在し、米国本土においてはメジャーな食い物(バーガーキングは一部米軍基地内にあると聞いたことはある)なようなのであるが、これらを日本で入手するのは少々難しい。 おおかた、メリケンな感じの雑な食い物なのではあろうが、いざ、手に入らないとなると、なんだか期待が高まってしまい、余計にイライラが募るのだ。形而上の存在であるはずの小説の食い物だけに、妄想力も作用して、必要以上に欲求が高まるのである。 これを食い物の恨みと言わずしてなんと言うか。 そういったわけで、余は、スティーブン・キングに並々ならぬ食い物の恨みをいだいておるのである。 SPQEにより承認 書記:総統
by soutou_d | 2005-05-19 14:32 | 所業
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||