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巡回路
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日本は呪いの国である。
科学万能の現代においても、形を変えて、呪いは盛んなのである。 これは、まじない、と読んでも、のろい、と読んでも通じる。 今回は、のろいの方で話を進めようかと思うが。 さて、突然だが、呪いのかけ方を知っておるだろうか? 実は、案外単純なので、諸君も機会があったらやってみるとよい。 呪いは、相手にわかるように、相手が理解し易い方法で、「お前を呪ってやる」と宣言するだけでよい。 そんな簡単な話ではない、と思うかも知れぬが、そんな簡単な話なのである。 有名なところで、丑の刻参りというやつがある。 丑三つ時に、藁人形に釘を打つというやつである。 他人に見られてはいけない、という条件がついているので、上記に矛盾するようにも見えるが、これは、ダチョウ倶楽部的表現であると言わざるをえない。 だいたい、夜中に白装束で藁人形と釘を持って出かけるバカが目立たないとか在り得ない話であるし、そもそも打ち付けた藁人形を現場に残すこと自体、見せつける為のものである証左だ。 誰にもバレずにやるのを第一義とするならば、場所の設定も神社なんぞというパブリックな場所を外すべきであるし、黒装束にすべきであるし、音が出るような釘打ちなどもっての他である。 人形つながりでいくと、ヒトガタ(木とか紙)にしかるべき措置をして、呪いたい相手の縁の下かどこかに埋めるというのがあるが、常識的に考えて、しかるべき措置というのが相手の名前を書いて云々というものであるから、これは、犯行声明以外の何者でもない。 ようするに、小難しい手順などは、いかにも呪ってますよという雰囲気を醸し出すためのギミックに過ぎず、「お前を呪ってます」と伝えることが重要なのである。 呪いは、かける方の力(主に演出力)でかかりやすさは変わるが、呪いによって受ける被害は、主にかけられた方の行動が生み出すものである。 呪われるぐらい誰かに怨まれているという事実を知るだけでも、空気の読める者はいい気分がしないものである。 ただ、大抵のものは、このぐらいなら多少気味が悪いと思っていたとしても平気である。 問題は、この後に何か起きたとき、呪われているという意識があれば、どうしても呪いに結びつけてしまいがちになるということである。 人間、生きていれば、その辺の石に躓いてすっ転んだり、食中毒になったり、95%命中の攻撃を二回連続で外したりすることがあるものである。 そういうことがあると、「流石の俺も呪いがあると信じざるをえない」という精神状態になり、あれも呪い、これも呪いで、どんどん追い詰められていって、しなくていい失敗までするようになり、もっと呪いを信じるようになって体調まで悪くなるという負のスパイラルなわけである。 スパシーボじゃなくてプラシーボ効果の逆バージョンであるな。 ところで、呪いから逃れるために、お払いなんかを受けに行ったりする場合がある。 大抵はうまくいくので、それで対処するのはいいと思うのだが、呪い解くという意味では、まったく逆効果であり、全然呪われたままである。 というのは、新たにお払いという呪いにかかっただけだからである。 神主だか、占い師だかが、祝詞か呪文かをムニャムニャ言って、なんか儀式っぽいことをして「呪いは解けました。バッチリです」と言ってくれたのでもうOKと信じ込んでおるだけだからである。 これは、大抵、呪いはとけたと信じることによって負のスパイラルから脱却することが出来るのだが、運悪く、その後も、鳥の糞が直撃したり、交通事故に遭ったり、仕事が納期に間に合わなかったりすると、全てパーというか、「あのお払い効いてねえ!」ということになって、余計悪い方向に進むのである。 具体的に言うと、次々お払いを試す過程で変な宗教に引っかかって金を搾り取られるとかであるが、本人がそれで幸せになれるのであれば、それもまた道ではあるな。 まあ、昨今のブログ炎上なども、ギミックを省きすぎた呪い儀式であり、2chなどは、さしずめ呪い飛び交う霊的空間と言って差し支えなかろう。 本当に呪いにかからぬようになるには、空気を読まず、物事を深く考えず、過去のことはほとんど覚えてない、という揮発性メモリの如き人生を歩む必要があるのだが、これはこれで、まわりが凄く迷惑であるから、それはそれで困る。 さて、かくの如く、呪いなどというものは乱数の偏りだと信じてやまぬ余であるが、時に不安になることもある。 果たして、余は本当に呪いから自由なのであろうか、もしかしたら、呪いは乱数の偏りだという呪いにかかっているだけなのではないだろうか。 「おぬしに惚れた女がいたとしてだな、おぬしでも呪によって、その女に、たとえ天の月であろうとくれてやることができる」 「教えてくれ」 「月を指差して、愛しい娘よ、あの月をおまえにあげようと、そう言うだけでいい。はい、と娘が答えれば、それで月はその娘のものさ」 「それが呪か」 「呪の一番もとになるものだ」 著:夢枕獏 『陰陽師』より SPQEにより承認 書記:総統
by soutou_d
| 2009-02-13 18:37
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